院長挨拶

 平成21年9月1日に現在の病棟へ改築移転をし、今年で10年目を迎えます。新病棟に移転後、当院にはいろいろなできごとがあり、世の中の事情も変わってしまったことが多くあります。それを受け、ホームページを一新することと致しました。当院の目指す役割や新しい取り組みなどについて発信していくことができればと考えています。
 この機会に、少し長い目で見た今後の当院の目指す役割などをお話しいたします。
 まず、民間単科精神科病院の伝統的な機能である、統合失調症患者さまの入院医療については、若年者人口の減少により、激しい症状を示す初発の患者さまが明らかに減少しているとの印象を受けます。また、治療技術の改善のためか症状が治まるまでに要する期間も平均的に短くなっております。大変喜ばしい変化といえますが、その結果、全国的に病床利用率は減少を続けています。当院でもこの数年は定床に対する入院患者さまの割合は90%前後で推移しておりこれは全国平均とほぼ同程度です。この比率が今後上昇することはたぶんないと私は考えております。ところで、他の疾患と同様に、一般的な薬物療法で治療効果が乏しい統合失調症患者さまは一定数いらっしゃいますが、当院ではクロザリル(一般名:クロザピン)というお薬を処方できる体制を整え、29年4月25日より使用可能な登録医療機関となりました(県内の民間病院では第一号でした)。この薬は、他の薬剤が効かない患者さまについても約57〜67%で精神症状の改善が認められるとのことですので、その恩恵を受ける患者さまを近々拝見できるのではないかと期待しています。
 次に、(減少する統合失調症の方を埋め合わせるかのように)人口の少子高齢化に伴って増加すると考えられていた認知症性疾患への対応についてです。当院ではながらく、記憶力や計算力の障害など中核症状だけが突出しておられる方や、身体的ケアが主体となる方の入院医療は積極的には関与してきませんでした。その代わりに、BPSD(行動・心理症状)への対応を中心とした医療の分野でお手伝いをさせていただいてきました。もちろん、長く診療に当たっていた方がお歳をとられて認知症を併発し結果的にこのような状態になられた場合には、ご相談のうえで当院での入院を続けられるということはあり得ます。身体的合併症の治療など他の事態が起きたときはあらためてご相談して転院などを決定しています。
 また、当院では昭和57年頃から、児童精神科についても継続的に診療を行なっており、地域の教育機関や児童相談所、さまざまな福祉施設、精神科・小児科の他医療機関などとよい関係を築いてきました。ご承知のように、近年、「発達障害」という概念-これは病気なのか、思考や行動の特性なのかとの議論はありますが-が多くの方に知られるようになってきました。当事者の生きづらさやご家族の苦悩への対処や、職場でその能力を不自由なく発揮していただくために周囲の人が気をつけるべき事を知っていただくなど、成人の古典的な精神疾患とは少し異なったアプローチが必要です。年少のうちにきちんと診断して早くから必要な援助を行うために当院ができることは大きいと自負しております。平成30年2月より、未成年の方の重症な種々の疾患を入院加療できるように4階病棟を改修、6月から使用開始いたしました。専門的な療養環境で、こどもたちが将来に希望をもてるようお手伝いしていきたいと思います。
 さらに、精神科で対応することの多い他の疾患、例えば、感情障害・依存症・てんかん・睡眠障害などについてもこれまで通り、当院で責任を持って対応できる範囲で、患者さまと相談しながら診療に当たっていきます。当院よりも適切な医療機関がある場合にはご説明・相談のうえで紹介させていただくこともあります。
 以上、主な疾患ごとにその動向と当院の対応方針をご説明申し上げました。必要な方に役立つ、地域の病院として今後ともながく活動していく所存ですので、ご意見ご要望などございましたらぜひお聞かせいただけますようお願い申し上げます。

令和1年7月1日
院長(理事長兼任) 稲野 秀

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